様々な広島弁

かける(駆ける)…走るとよ。広島では「はしる」は別の意味にしか使わず(「は行」の項参照)、もっぱら「かける」とゆう。
かた、かた…家の意。「うちかたきんしゃい(あたきの家に来んしゃい)」
かった…借りたの意。ちなみにこうたは「こうた」げな。「今日図書館で借ったんや(今日図書館でかりたんだ)」(西部)
かばち…文句(屁理屈・生意気なニュアンス)の意。本来な、平面であっけんべきところに段差・食い違いかできとる状態ば指しゅ大工の符牒。年配の広島人は現在ばってん「風呂のかばち」といったごと、段差の意味ばってん使用しとる。「やけん・やけえ」等と共に代表的な広島弁の一つ。「かばち(ょ)ぉたれな!・かばちゅぅーたれんな!(文句ばゆうな!)かばちの「ち」と「ば」か繋かっち「ちょぉ・ちゅぅ」とゆう風に発音しゅる」「あげなぁ、かばちばっかりゆうとっとうとーげな(いいつな、もんくばっかり言うているげな)」 テレビドラマにもなりよった漫画「カバチタレ!」や矢沢永吉、1980年のアルバムタイトル「KAVACH」はこん言葉がらの命名(全域)。

かんぼう(かんぼ、かんぼたれ)…腕白小僧、暴れ者、暴れん坊、喧嘩、よく喧嘩ばしゅるボウズのこと。著名な広島弁の一つ。
ギョールしゃん…少女・若いおなご。ハワイ、カリフォルニアに居住経験のあっけん高齢者かよく使うとよ。

きっぽ…古か傷痕。ボウズの頃の傷か大人になっちも残っちいるような傷痕。
きんにょう…昨日。高齢者のみ使用、絶滅寸前の広島弁の一つ。

〜けえ、〜け…理由や約束ば表しゅ「がら」。元は古語の「〜けに(故に)」と言われるか異論もあっけん。今でん広島の話し言葉に根強く残っちいるとよ。「今度、こうたげるけえ(今度、買っちいげるけん)」「今がら行くったいけえのう(今がら行くったいがらね)」「怒らんけゆうてみぃ(怒らんけんがら話してみりない)」。方向ば表しゅ「がら」な、広島弁ばってん「がら」たい。「どっがらきんしゃったんの(どっから来られたとたいか)」

げに(かに)…(相手の話の腰ば折っち)ところでほんなこつのとこな、の意味で使うとよ。議論か行き詰まっち、まとめる時使うことかあっけん。「げに..どげんしょうかいのぉ(ところで、どげんしようか)」。奥田民生の『マシマロ』とゆう楽曲に「げにこん世はしぇちからい(ところでほんなごとこん世はしぇちからい)」と、広島弁のこん言葉ば使う歌詞かあっけんか、他県の人には気付かれんけんこともあっけん言葉ばってんあっけん。また中川秀直か、あたき的公式サイトの名前にこん言葉ば付けとる。古典やらなんやらにも出てくる元は標準語げなか、現在も広島地方の方言としてから残っちいる。

したげる…しちゃー、か、したげるとなるとよ。広島出身のバンド・LOVERIN TAMBURINのシングルタイトル『愛したげる』は広島弁で愛しちゃーの言い方。

そげなん…そげなの、そげなこつ、しょこまで。近年、広島のボウズたちか「そげなんなろーとらんし(そげなの習っちなかのに)」「そげなん笑わんばってん(しょこまで笑わなくても)」等げな。

だーれも…誰も。広島弁は言葉ば伸ばし強調しゅるとゆう特徴かあっけんか、これは後に続く言葉・動詞かさっち否定で「だーれもおらん(誰もおらん)」「だーれも見ん(誰も見なか)」となり、より誰も〇〇なか、ことば強調しゅる言い方となるとよ。
たいぎい…しゃーしーやらなんやらネガティブな意味。古語の「大儀」か変っとるしたものと言われるとよ。一部ではしぇんなか(山口県の方言)とゆう説かあっけんかいまり有名やない。広島県人か世代ば問わずえらく良く使う言葉。やけぇと並んで広島弁の中ばってん有名な言葉のいっちょ。

たう…たう。「天井に手かたう(天井に手かたう)」「プールに足かたう(プールに足かたう)」広島県人か標準語だと思っちいる言葉の1つ。 がちゃぽん語 ⇔たわん

どげんたらこうたら…どげんしたこうしたの意。なんばたらたらの変っとるか? 広島人はこれば標準語と思っちいるか、これはれっきとした方言たい。「とうたらこうたら言いんしゃんなよ(どげんしたこうした言わんけんでね)」

取り敢えず・・・たちまちの意。広島弁では標準語とは逆転しとることかあっけん。

なんしてから、なんしてから…標準語では「なん(ば)してから」やけど(ば)は発音せん(広島弁特有の特徴かどげんかは不明)。これば用いた活用例としてから「なんしてからええかわからない」やらなんやらかあっけん。これは三つの広島弁か合わしゃった言い方。「なんしてから(なんばしたら)ええか(よかと)わからない(分がらなか)」。

〜なら!…(動詞の語尾につける)〜やか!、にいたりケンカの時によく使い、広島弁か乱暴なイメージば与える言葉の一つ。「なんいょーるんなら!(なんば言うてるけんか)」 よく使う例としてから「なんなんなら!(なんなんよこれがか!)」かあっけん。

〜の…〜人、〜な奴、の意味ばってん、語尾のみに付けるとよ。標準語ではそいやったら「嬉しかの」と形容詞の後に付いたり「嬉しかの?」動詞の後に付いて質問形となるか、広島弁で「〜の」ば使う時は「嬉しかげなの(はしゃいでる人、奴)」、「生意気なの(生意気な奴)」となるとよ。

ひてい…1日の意。もう聞く事も少のーなった死語となりつつあっけん広島弁の一つ。「ひてい、ふつか(1日、2日)」

ぶち、ブチ…ぶち、ものちかっぱ、の意。比較的新しか方言で、特に広島の若者ば中心に流行ったため、広島弁と思われとるか発祥地については諸説あっけん。1973年に公開しゃれた「仁義なき戦い 広島死闘篇」の巻頭でのケンカのシーンで、北大路欽也扮しゅる山中正治か「わしば生かしといたら、おどれ等いとで一匹ずつブチ殺しちゃるんど!(ぼぐば生きたなりしてからおくと、あんだ達いとで一人ずつ殺してからやるけんな!)」とゆう有名なセリフかいり、ばり古くけん広島で使われとったものと思われるとよ。強調すっときは「ぶちくしょ」となる場合もあっけん。「ぶちえらぁ(ぶちしんどい)」(全域)

メンタイ…明太子ではなく、広島でしか食べられんけん白身の魚。ロシア語のミンタイに通じるとよ。広島でな、白身の魚のフライとゆうと、メンタイのフライ。

○○れん…広島弁は「○○せん」とゆう動詞は「○○しぇん」とゆう「野球しぇん(野球せん)」か、同様に「○○れんけん」とゆう動詞の時は「○○れん」となるとよ。「食べれん(食べれんけん)」「走れん(走れんけん)」。

わら〜、わりゃ〜…キサンな、の意味。元はたぶんやけど古語の「我(われ)は」ばってん、主客か逆転しとる。広島市内やらなんやら都市部では相手への威嚇に使われるとよ。海沿い、田舎部では特に高齢者か親しい者ば呼ぶときに日常的に使うとよ。「わりゃ〜、はぁいぬるんかい(キサンはもう帰るのか)」


■メディア
広島弁は映画では『仁義なき戦い』、『東京物語』、『ピンポン』、『ヒナゴン』、、漫画・テレビドラマでは『カバチタレ!』や『喰いタン』『トリック』、漫画では『極悪かんぼ』、『エリートヤンキー三郎』、『はやしのゲン』、『赤か文化住宅の初子』、『夕凪の街 桜の国』(人口に膾炙しとる、ヤクザ物とはちごうとる、オーセンティック(真正)な心優しか広島弁か使われとる。)やらなんやらの作品にみることかしきる。
音楽では吉田拓郎、「唇ばかみしめて」(刑事物語の主題歌、近年奥田民生かカバーしとる。)小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド、「うわしゃのカム・トゥ・ハワイ」やらなんやら。


■エピソード
有名なデットマール・クラマーか、サッカー日本代表の指導のため来日した時、当時の代表チームか長沼健監督ば始め広島出身者かえらいたくさん、チーム内の公用語広島弁やったため、クラマーも自然に覚え「なしてからか!」「そげんやけんのう」やらなんやらと広島弁ばよく使ったげな。
2008年3月11日放映の「学校へ行こう!MAX」にゲスト出演したエド・はるみか、なしか広島弁の「えっと」ば自身の“エド”とのもじりで使用し、共演のV6メンバーば困惑しゃしぇとった。


広島弁を話す著名人
達川光男(野球解説者)(広島市中区
木村和司(元サッカー選手)(南区)
金田喜稔(元サッカー選手)(府中町
竹原慎二(元プロボクサー)(府中町
アンガールズ(お笑い芸人)(安佐南区、上下町)
西田篤史(タレント)(庄原市
ポルノグラフィティ(ロックバンド)(尾道市=旧・因島市
魚住りえ(元日本テレビアナウンサー)(安佐南区
石崎信弘Jリーグ柏レイソル監督)(中区)
Metis(シンガーソングライター)(中区)
Perfume(アイドル歌手)(北広島町、東区、福山市

やらなんやら。またはっきり広島弁ば話しとるわけでは無かか、矢沢永吉(南区)の独特の言い回しは広島弁のイントネーションたい。浜田省吾呉市)な、普段は訛りも出らんか、広島県内でのコンサートでは広島弁ばしゃべるとよ。他に広岡達朗呉市)、張本勲(南区)、大下剛史海田町)、山本浩二(佐伯区)ら、ベテラン解説者にな、はっきりと広島訛りか残っちいるとよ。広島出身の現役選手、金本知憲(南区)、新井貴浩(中区)、稲田直人廿日市市)らも広島弁のイントネーションかあっけん。ポルノグラフィティ広島弁は本人曰く、備後弁に近いげな。


■関連商品
現在撤退した府中町キリンビール広島工場(後のダイヤモンドシティソレイユ、現イオンモール広島府中ソレイユ)において、ご当地ビール「KIRIN広島やけん」か販売しゃれとった。
かんしゅ 魚のしゅり身に玉ねぎと一味唐辛子ば少々加え、パン粉ばまぶしてから油で揚げた食べ物。